4月27日の《和菓子のじかん》では、4人の菓子作家による4皿とお茶のペアリングのコースを提供いたしました。
それぞれが思い描いた「じかん」を映したひと皿。
お品書きはこのような感じです。
1.初夏のリフレッシュじかん
霜鳥 詩瑠久 /らぼらとわーる しるくわがし
菓
紅甘夏のみつ豆
さまざまな味わいと食感の紅甘夏、
マスカルポーネクリーム、黒みつの調和
茶
カングラ1stフラッシュ cold・ インド
2.初夏の庭で過ごすふたつのじかん~レモンの相似形~
小野 桃子 / 御菓子のらめ田
菓
2種のレモン菓子の食べくらべ
オリーブオイルと白いケシの実のレモンケーキ
レモンカードの村雨とレモンの新芽の浮島
茶
祁門紅茶 特選・中国安徽省
3.ハレの日のごちそうじかん
まきの あや / Café Irodori
菓
甘くない、塩ぜんざい
鴨脂とオレンジ風味
茶
奈良 吉野 天日干し番茶(古来製法) ・ 日本
4.焼きたてとろりを味わうじかん
内田 いつ子 / 御菓子うい
菓
こし餡の葛焼き パルメザンチーズ
いちごとミルクパイナップルの自家製ソース そばの実と生黒胡椒を添えて
茶
サバラガムワ シーズナル ・ スリランカ
***
御菓子のらめ田からは、
『初夏の庭で過ごすふたつの時間〜レモンの相似形』と題して、レモンケーキと村雨、ふたつのお菓子を並べてご用意しました。
レモンケーキは、搾りたてのレモン果汁を染み込ませたしっとり酸っぱい仕上がりで、オリーブオイルと白い芥子の実がアクセント。
中央を丸く抜いて、ギリシャヨーグルトとマスカルポーネのクリームを詰めています。
村雨は、白餡に米粉を加えてそぼろに濾したお菓子。こちらにはレモンカードを効かせ、レモンの新芽を入れた浮島と蒸し合わせました。
こちらも丸く抜き、甘さ控えめのつぶ餡を添えています。
レモンを主題に、和と洋の両面からお菓子を作りました。
『東京の小さな庭を眺めながら午後のお茶を飲む女性。
イギリスの庭園で朝のティータイムを過ごす女性。
ふたりはまったくの他人だけれど、
”いま世界のどこかで、自分と似た誰かが、同じような気持ちを抱えながら時を過ごしているかもしれない”
と、思い浮かべている。
益体もない空想だが、その空想が少しだけ、彼女たちを勇気づける。』
お菓子を作りながら、こんなストーリーが思い浮かびました。
場所や時間を超えて、気付かぬうちに知らない誰かと呼応しあっている…そんな瞬間を、このひと皿で表現できていたら幸いです。
こちらのお菓子にペアリングしてくださったのは、
祁門(キームン)紅茶 特選 中国安徽省
和でも洋でもない、オリエンタルな香りと味わいのキームン。ティーコーディネーターの梅田なお実さんのお見立て通り、レモンを使ったお菓子にぴったりでした。
素晴らしいペアリングをありがとうございました。
と、こんなに長々と解説の付く菓子を作っておいてなんですが、
お菓子は召し上がった方のものなので、どのように感じていただいても嬉しいのです。
コースのお席でも、「お菓子の穴がイギリスにつながっているみたい」など、自由な感想を伺えたのがとても嬉しく感じました。
あれこれ考えて作ったものを差し出して、それを受けとった方が自由に噛み砕いて、思いがけないところを楽しんでくださる。
お菓子を作っていていちばん楽しいのはこういうことなのかもしれない、と実感した1日でした。